より理想に近いデータセンターを作るためには

Data Centre Management

ITと切っても切れない関係にある“データ”。データやそれを処理するIT機器は、各社が個別で保有していることもあれば、“データセンター”に預けるケースもある。高い可用性を保ちながら自前でハードを保有し管理運用を行う手間やコストを省き、導入や運用はもちろん、刷新時のコスト、時間を大幅に軽減できるのがデータセンターの魅力。東日本大震災により、データセンターは“場所”も重要な要素となってきた。

一方、我々はデータセンターについてどこまで知っているだろう。設置場所は?冷却は?停電対策は?災害時は?データセンターの構築、導入時に考慮しなければいけない要素が増えてきている今、お客様に提案する立場のみならず、自社で導入する際にもデータセンターの知識は不可欠になっていると言っても過言ではない。

 

今回は、こうしたデータセンターのファシリティに関わる知識を習得できるEXINに認定された「データセンター研修コース」で講師を務める大谷淳一氏に、同コースの魅力を紹介していただいた。同コースでは、国際標準認定資格の取得を目指している。

 

ITの根幹に精通した講師

 ■大谷さんがそもそも本セミナーの講師になった背景を教えていただけますか?

大谷さん(以下、大谷):  私は大学時代、電気工学や電力について学んでいました。その後、通信自由化に時代が移り変わった時期に就職し、全国にアクセスポイントを作成する部隊に配属。大手の建築会社様や設計事務所様と一緒に通信局を作って行きました。

 

■データセンターに関わるようになったのは?

大谷:  より技術的に「幅広いこともやりたい」と考え転職、企業のアプリ開発や上流コンサル、インフラ構築、果ては配線工事までITの上から下までを10数年担当していました。その時に、データセンターの構築も携わる機会が増えました。データセンターにすぐに興味が湧いた訳ではなく、自社はもちろんクライアントのIT環境を構築する上で、ITと建築の融合が重要だと感じ、様々な方に鍛えられながらデータセンターへの興味が強くなっていきました。

 

■現在は、どのようなお仕事を手がけられているのですか?

大谷:  2007年に独立し、ITベンダー様や非IT企業様(以下、施主)と建築会社様を結びつけるオーナーコンサルを行っています。施主からのご依頼で、建築会社様の提案や設計図から見積までを確認し、より施主の目的に適う可用性、柔軟性を持つデータセンターやオフィス、倉庫などの構築をお手伝いしています。
素晴らしいハードを構築しただけでは意味がありません。運用や将来の変化を想定しスペースやファシリティ、バランスを調整しながら施主やプロの意見を集約する。理想に近いデータセンターを構築するため、必ず現場に伺い現場の方と話をしながら進めます。

 

■データセンターの構築で、“難しい”と感じる部分はありますか?

大谷:  日本の大きな特徴はある意味「作りながら決めて行く」点。おおまかな設計で予算を見据え「この中で作って欲しい」と建築のプロに伝え、プロはその中でベストを尽くします。建築会社様は施主に、すべてお任せくださいというスタンスで臨み、施主の大半もそれを望みます。

一方、海外は施主が予め完成物を想定し、各ベンダに個別に依頼しますが、実際にはその選定やチェックをコンサルに委託し、仕様を含め細かい部分を決定した後に予算を算出する。この時点で、複数の角度から設計がチェックされ、多くの問題を潰すことが可能です。

私は日本で従来あまりなかったこの“コンサル”すなわち施主の立場で提案や設計・見積をチェックし施主の目的を合理的に実現する役割を担っています。よりよいものを手に入れるためには、専門家にお任せでなく自らの判断力を持ちたいという施主のご要望も多いのです。

また、多くのケースで、構築の意図が運用側に伝えられない、運用側の要件が構築時に反映されない。ここも私のコンサルのかなめです。
こうした経験から、日本ヒューレット・パッカード社(以下、日本HP社)に声をかけていただき、本コースの講師を務めることになりました。

 

参加者の“実務”を意識した講義

■大谷さんが担当されている本コースの内容を教えていただけますか?

大谷: データセンター・プロフェッショナル認定コース(CDCP)は、二日間を使って約350ページのテキストを説明します。初日はデータセンターを考える上で重要な建築物や土地、床下、照明、電力設備について講義。中でも皆さま苦手とおっしゃる電気に関しては、全12時間のうち4割ほどの時間を使って厚めに解説しています。

 

■2日目の内容は?

大谷: 近年大きな課題である空調について、その基本を解説します。サーバルームの空調は一般的な冷却とは大きく異なります。それと、災害対応やセキュリティ、例えば消火や入室管理などを解説し、サービスレベル・アグリーメント(SLA)やオペレーションレベル・アグリーメント(OLA)の基本的な考え方を紹介。こうした“信頼性”を解説する際は、実際にあった大きな失敗談を挙げるなど、実感していただきながら解説しています。

 

■大谷さんが講義を行う上で工夫していることなどはありますか?

大谷: 多岐にわたって必要とされるデータセンター関連知識を整理し、体系だてた認定資格スキームが用意されているのは、EXIN社のこの資格スキームがワールドワイドで唯一のものです。しかも、ベンダ ニュ-トラル、日本語対応となれば、日本で本コースが唯一無二のものとなります。

 

本コースは、ヨーロッパ ベースのEPI社が教育教材を開発し、EXIN社の認定取得がなされています。本コースを日本HP社がEPI社と協業で講師育成を含んだローカライズを行いました。 基本的に講義はインストラクションガイドに沿って進めています。ガイドからデータセンターの“核”の部分が学べますが、あくまで現実の場面に適用できるよう、直面するであろう“課題”と“解法”を紹介。自身の経験をシェアすることを意識しています。
また、技術者はもちろんですが、建築やITでも営業を担当されている方やデータセンターのユーザ様など幅広い方が参加されるので、“計算式”を使わないで説明することを心がけています。

 

■特に“電気”を厚めに解説していると仰っていましたが、“計算式”を使わないのでは参加者も理解しづらいのではないでしょうか?

大谷: 専門家でなければわからないような複雑な“計算式”が必要なレベルは、それこそ専門家に任せてよく、自分でできるかは多くの関係者には重要ではありません。 肝心なのは、計算が示す意味や狙いが何かですので、「イメージで理解できる電気」を意識して説明しています。全ての参加者が理解できるよう進めるのはもちろんですが、参加者が実際にお客様に説明しあるいは専門家と話をする際、計算式よりもむしろ意味や狙いを共有し適切な質問ができればベストですよね。

 

■参加者の目的も理解した上で、講義を行っているのですね。

大谷: 本コースの最終日には認定資格試験を行います。 取得した資格は名刺に記載できますが目的は試験に合格することではなく、希望や目的に沿ったデータセンターを構築する、適切に運用する、あるいは選んで使う、ことではないでしょうか。
安心して長く使っていただける、付加価値をつける、またトータルでコーディネートする必要がある。営業や企画、設計、お客様受け入れを担当されている方なども多く参加していただいています。講師インストラクション マニュアルを読み上げるのではなく、私の経験も交えて、どう伝えれば“腑に落ちる”のかを最も意識しています。

 

多角的な視点を身につけることができる

■他のコースについても教えていただけますか?

大谷: 2日間のCDCPコースのほかに、3日間のデータセンター・スペシャリスト(CDCS)とデータセンター・ファシリティオペレーションマネージャ(CDFOM)認定コースがあります。CDCSコースはCDCPの取得が必須、より深く専門的な知識すなわち設計の評価が可能なレベルを身につけることができます。また、CDFOMコースは、CDCPの取得は必須ではありませんが同等の知識を前提として、データセンターの運用管理を解説。ファシリティチームの作り方から解説し、性能管理や点検、安全管理や業者様とのつきあい方など含め運用の在り方そのものを多角的・実務的に学べる講義です。

 

■CDFOMは、また違った視点でデータセンターを学べるんですね。

大谷: チームメンバーがより能力を発揮するためには、人事交流の方法やワークスタイルなども絡めます。ケーブルの管理、掃除の仕方、エネルギー効率など全てに人が関わってきますよね。“運用”を考える上では、人事や組織、なぜ機械でなく人なのかを考えることも重要なんです。

 

■大谷さん自身は本コースの講師を勤めて学んだことなどはありますか?

大谷: 本コースには、日本全国からデータセンターに関連する方が集まってきます。結構言いづらいことも話しているのですが、必ず役に立ちますので、敢えてお話し、各“プロ”の方々の意見をいただいています。

先にも申し上げましたように、データセンターの構築には様々な立場の多くの“プロ”が関わっています。その中で、相互の仕事や権限、仕事観を知ることは最も重要です。本コースでは、参加される皆さんが各“プロ”の仕事を知る機会にもなりますし、私自身も皆さんから意見を頂き、より理解を深める機会になっています。そういう意味では、参加される皆さまにもご遠慮なく疑問やご意見をぶつけていただきたいのです。実際にそういう回は盛り上がりますし、参加者も自分も、充足感が大きいですね。

 

■最後に本コースについてメッセージをいただけますか?

大谷: データセンターは見るべき、考えるべきポイントが多岐に渡ります。それら全てに精通するのは非常に難しい。しかし、ポイントを押さえ各分野の“プロ”の知見をお互いに引き出すことが出来れば、柔軟性と可用性の高いデータセンターの構築ができます。
本コースでは、データセンターに関わる幅広い視点を得られると考えています。EPI社のグローバルレベルでの素晴らしいコンテンツと講師の知見や参加された“プロ”の意見やお話、これらを有機的に結び付け、実務に取り入れやすい内容にしております。

ありがとうございました。

 

【大谷淳一氏プロフィール】

(株)リクルート、(株)電通国際情報サービスにて、ITインフラに関する方針策定・企画立案・構築・運用立上げまでの各フェーズにつき、幅広くかつ深く関与し多くの実績を残す。2007年より現職。特に、大規模オフィス構築や全社ネットワーク構築、データセンタの企画・建設等の大規模プロジェクトにおいて、課題の整理と解決・関係者間の調整と交渉・上流工程から現場レベルまでの指導等を、大所高所からバランスよく目配りし推進することを得意としている。また、これらをベースに、各種のセミナー講師を実施。

 

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