アジャイル資格者インタビュー:ソフトウェアテストの専門家が取り組むアジャイル開発と品質改善とは?

40年以上にわたって、1,100社以上のソフトウェア開発の品質向上に貢献してきた株式会社ベリサーブ。同社では、お客様からの要望に応えるべく、2019年よりアジャイル開発の有資格者の増員に注力している。ITシステム事業部の横串組織である技術開発推進チームで、プロセス改善やアジャイル等の資格取得を推進している北尾謙二氏と小澤淳子氏に、アジャイル開発導入前と今の変化、そして今後の展開についてお話を伺った。


株式会社ベリサーブ、北尾謙二さんと小澤淳子さん

 

本格的なアジャイル導入のための横串活動に着手

─アジャイル開発の導入を進めた経緯についてお聞かせください

北尾:株式会社ベリサーブ ITシステム事業部では、自動車・航空機等の大型プロダクト、Webサイト、パッケージソフトなど、お客様のソフトウェア開発の品質検査、品質向上のご提案を幅広く行っています。5年ほど前から、お客様からのアジャイル開発に対するお問い合わせ、要望の高まりを実感するようになりました。スクラム開発で活躍できる人材の引き合いが多くなり、社内の人材が不足ぎみになりつつありました。そこで、2019年よりITシステム事業部内で「技術開発推進」として、各現場を担うメンバーが協力・連携する、横串活動を実施しています。その活動の一つが「アジャイル推進」であり、社内への教育、社外への発信・PRなどにつながっています。北尾と小澤も、この「技術開発推進」チームの一員として活動をしています。

 

─「アジャイル開発 x テストQA」をより効果的に進める施策とは?

北尾:テスト、品質改善の観点から、ウォーターフォールのテストチームと、アジャイルのチームの中でチームの一員として動くアジャイルQAに求められるものは大きな違いがあります。アジャイル開発を効果的に進めていくためには、従来のテスト担当者、テスト技術者の経験や知識では足りない部分があり、スクラムマスター、プロダクトオーナー、開発者というプロフェッショナルの立場で、チームとして動いていく必要があります。従来のような設計から実装を担う開発チームと、テストのみを担当するチーム、二分されたスタイルではやっていけません。そうなると、スクラムマスター、プロダクトオーナー、開発者という役割に対して支援ができる知識と経験が求められるようになり、それを補う教育が必須となったのです。

 

─アジャイル開発の現場における取り組み、お客様のニーズについてお聞かせください。

北尾:私たちは、お客様のプロジェクトに対して支援を行っています。例えば、プロダクトオーナーへの支援では、不具合の状況を分析する他、チームの課題を洗い出します。バッグログが整理できていない場合は、解決のための支援を行います。また、開発者への支援については、テストでどれだけ品質を高められるか、開発プロセスやテストプロセスの整理を行った事例があります。現時点で、IT事業部で取り扱う案件のうち、およそ半分がアジャイル開発の案件となっています。

小澤:現場で感じるのは、ウォーターフォールのスタイルで行っていても「のちのちアジャイルに移行したい」「ハイブリッド型で一部アジャイルの要素を取り入れたい」という潜在的な顧客ニーズです。また、「アジャイルにしたいが導入方法がわからない」という声も増えています。アジャイル開発を希望する裾野は、今後さらに広がっていくと予測しています。

北尾:日本にアジャイル開発が紹介されて以降、お客様サイドで市場に合わせてより早く、より頻繁に仕様変更してリリースをしなくてはいけない案件が増えています。例えば、最初のリリースをウォーターフォールで計画して開発し、その後新機能の追加や不具合対応などを小規模な開発をアジャイルに切り替えて、素早いリリースの要求に応えたというケースもありました。

 

─アジャイル導入後の顧客満足度について、どう感じていますか?

北尾:正直、アジャイル導入自体のハードルが高くてすぐには上手くいかないケースもありますが、開発組織の成熟度が高いお客様だとアジャイル開発を最適な方法としてスムーズに導入できます。弊社としても、テスト担当者の枠を超え、改善提案までさせていただける場合は良い結果につながりやすくなります。

 

─アジャイル関係の有資格者は、社内にどれぐらいいらっしゃいますか?

北尾:ITシステム事業部では、2018年頃よりアジャイル開発に対応すべく取り組んできましたが、本格的な活動がスタートしたのは2019年で、業部内の「技術開発推進」活動のタスクとして、全社展開を進めています。その活動の一つの成果として今ではスクラムマスター、プロダクトオーナーなど既に200名を超えています。

小澤:弊社ではさまざまな教育が充実していますが、社員が自主的に受講する風土があります。また、弊社では時折、社外/社内でアジャイルのイベントを行いますが、たくさんのお客様、社員に参加いただいています。これらのイベントでは、アジャイルに関する弊社の取り組み、品質の求め方などの発表、個別のお悩み相談会を実施しています。

北尾:有資格者を増やすために、これまで私自身が最初に資格を取得し、その経験をもとに勉強会を開催し、全社へ広げていく役目を担ってきました。2024年からは横串活動「技術開発推進」として本格的に始動し、他社のスクラムマスター資格も含め、社員にとって資格取得の選択肢が増えるようにしたいと考えています。

 

─改めて、EXINアジャイル ファンデーションの魅力についてどう感じていますか?

北尾:私が受験して感じたEXIN Agile Scrum Foundationの魅力は、スクラム全般を網羅できる知識体系になっていて、それをしっかりと問われる出題傾向だったことです。用語とその説明に関する問題を答えるには、例えばプロダクトバックログは、何を目的としているのか?など、それぞれのイベントとそのイベントの成果物が何を目的としているのか?などをきちんと理解していないと合格できないので、学習の中で整理して知識を蓄えることができました。 実際に、受験後に参画した現場で、スプリントプランニングで詳細な技術的な話に入り込んでしまうことがあり、スクラムイベントの目的を明確にして、今は何をどこまで話し合うべきなのか意見をすることができ、チームで気づきを得ることができました。他のアジャイル資格では、試験はどちらかというと確認テストのような位置づけで試験よりも講師によるセミナーとスクラム体験の研修がメインでしたので、今回の受験による知識の獲得も良いと感じました。

小澤:私のようにそこまでアジャイルの深い知識がない者にとっては、広く俯瞰して知識を得られるというメリットがあります。EXIN Agile Scrum Foundationですと、自分がどの立ち位置になったとしても、参画できる基礎知識が得られます。知識体系が網羅できることで、スクラムマスター目線だけでなく、開発者目線やプロダクトオーナー目線でも考えられるようにもなります。

 

─アジャイルによるチームの幸福度について、お聞かせください。

北尾:案件によって異なりますが、私の知っている現場では、残業時間が削減できたと聞きます。上手くいっている現場では、チームメンバー自身が時間のコントロールをしやすく、私生活がかなり充実した様子が見受けられます。アジャイルの文化として、社員とベンダーの区別がほぼないことから、ベリサーブの社員ではなく、開発チームメンバーの一員としての発言を求めてくださることもあります。それはたいへん嬉しいことであり、本音で指摘することができ、お客様にとっても良い結果につながります。

小澤:アジャイル開発の現場では、コミュニケーションを密にとることもできます。スクラムの場合は、責任者は個々ではなくチーム全体。役割の考え方が違うことをどれだけ理解し、皆で行うという感覚をもつことが必要です。一方で上手くいっていない現場では、基礎知識が不足していることから、資格試験の勉強が役立つのだと思います。近年では上流の工程で私たちが品質改善を担うケースも多くなっています。その場合は、仕様書そのものの品質、プロセス自体の品質を上げていくことが求められます。PMのサポートはもとより、管理を上手く回していくための支援を行うことも増えています。

 

─将来の展開について、どうお考えでしょうか?

小澤:「ベリサーブの役割」という観点では「オーナーのためのテスト」、つまりウォーターフォールでの下流工程にあたるテストだけを求められているわけではなく、より上流工程での品質活動を行うにあたって必要なプロダクトオーナーとしての知識も必要になってくると思っています。その意味でEXIN Agile Scrum Foundationは有効だと思っています。

北尾:人材育成の観点では、現在、EXIN Agile Scrum Foundationのサービス化を進めています。前述の通り、ITシステム事業部だけでなく全社にて社員向けのセミナーを実施し、それをお客様にサービスとして広げていくのが目標です。このサービスでは、テストを行う立場として、アジャイルQAで悩みを抱えるテスト関係者の方々に向けて行うことを考えています。品質を含む開発全般においてアジャイルでどう品質を保つのか、高めていくのか、お客様にヒントを見つけてもらえるセミナーの開催を目指します。アジャイル開発というと、効率化やスピードが着目されがちですが、良いアジャイル、良いスクラムチームが文化として醸成されている現場は、品質も向上します。その品質面の測定方法、ゴールへの着実な道筋のご提案など、品質活動を行うベリサーブだからこそできる価値提案があると考えています。

さらに、EXINでは、アジャイルビジネスプロフェッショナル、スクラムマスター、プロダクトオーナー、アジャイルコーチなどアジャイル関連の資格、DevOps、Leanなどその他の資格も豊富に用意されていますので、第二弾、第三弾としてチャレンジしたいと考えています。今後も、開発活動に深く入り込み、各種取得のセミナーや取得支援、サービスを増やしてまいります。

 

【プロフィール】

北尾 謙二氏 ITシステム事業部

JSTQB Advanced <テストマネージャ>
JSTQB Advanced <テストアナリスト>
EXIN TPI NEXT® Foundation
EXIN Agile Scrum Foundation

 

小澤 淳子氏 ITシステム事業部

JSTQB Advanced <テストマネージャ>
JSTQB Advanced <テストアナリスト>
JCSQE(ソフトウェア品質技術者)中級
EXIN TPI NEXT® Foundation
EXIN Agile Scrum Foundation

EXIN Foundation TPI NEXT
exing agile scrum foundation badge