AIは今、ビジネスの中心。AIファンデーションで基礎的な知識を身に付ける

~企業・講師インタビュー~

AIは今や身近なところに活用されている。AIがビジネスの中心になっていることは間違いない。日本ヒューレット・パッカード(HPE)ではAIファンデーションをAI教育の入口として位置付けているという。

HPC&AI/MCS事業統括 第2プリセールス部の長竹茂紀氏、教育を担当する饗場守氏、AIファンデーションの講師である川添真智子氏に伺った。

 

◎AIを提案するにはAIファンデーションは必要

──長竹さんはどのようなお仕事をされているのですか?

長竹:私はプリセールス・コンサルタントとして、営業担当と協力してコンピューターのシステムをお客様に提案しています。エンジニアなので、技術的な側面からの支援が中心です。

 

──AIファンデーションの資格を取られたのはどうしてなのですか?

長竹:HPEは、サーバー・ストレージ・ネットワークのハードウェアを用いたシステムを提供する会社ですが、いま、様々な領域で、お客様からAI、とりわけディープラーニングや機械学習のためのシステムが求められています。私は、ディープラーニング教育の講師もしていますが、AI全体を俯瞰できると思い、AIファンデーションの内容を学習して、取得しました。

 

──お客様からのAI案件が増えている、ということですね。

長竹:確実に増えています。毎年、新しいお客様から「AIに対して投資をしたい」とご相談をいただいています。

AIの提案をするためにはその知識が必要です。また、お客様にはAIに詳しい方もいますが、基礎的なこと、例えば「AIとは何か」「ディープラーニングとは何か」から説明しなければいけないこともありますので、AIの知識は必須です。

 

──AIのニーズはいつ頃からなのでしょう?

長竹:私が普段携わっているのはスパコンを中心とした大型のコンピューターですが、5年ほど前からAIがその用途に加わることが増えてきました。

私のお客様でAIに取り組んでいる多くは製造業の企業で、後は大学、研究所です。最近では医療系の研究所が増えてきています。

 

──HPEの製品と絡めると、どのような提案が多いのですか?

長竹:基本的には、GPUを搭載した複数台のサーバーと、データを高速に読み書きできる共有ストレージ、それらを高速につなぐネットワークを組み合わせて構成します。そこに、AIのソフトウェアをインストールして使える状態にしてお渡しすます。典型的なハードウェアとソフトウェアをパッケージ化した、AIバンドルと呼ばれるソリューションを販売することもあります。

 

──AIファンデーションの試験はどのようにして受けられましたか?

長竹:AIファンデーションはHPE本社が教育コースに採用しています。そのため英語のテキストがありました。それを読んで1か月ほど勉強し、模擬試験を受けて備えました。扱う話題が幅広いとは感じましたが、試験は選択式だったため、難易度はそれほど高いとは感じませんでした。

 

──どのようなことが印象に残っていますか?

長竹:ディープラーニングを教えていますが、AIファンデーションの範囲はディープラーニング入門よりかなり広範囲です。人工知能に対して人間の知性はどういうものか、とか、倫理について、あるいはロボティクスや建築の話まで出てきたことは印象に残っています。普段、コンピューターのエンジニアがあまり考えないような話が多く、とても興味深く思いました。

文系と理系という分け方は少し古いかもしれませんが、どちらかというと文系出身の人の方が興味を持ちやすい気がします。理系出身の人でも、さまざまなことに興味を持てる人にとっては、とても有益だと思います。

 

──AIファンデーションは仕事で役に立っていますか?

長竹:資格が直接的に役に立つということは、他に取得した資格も含めてあまり多くありませんが、勉強する過程では様々な知識やものの見方・考え方が身に付いていると思います。

お客様に提案するとき、AIファンデーションの試験を受けたことで、お客様の課題をより幅広い方向から捉えることができるようになってきていると感じます。その意味では、役に立っていると言えるのかなと思います。

 

──長竹さんとして今後の展開があればぜひ。

長竹:AIは日々進化していて、常に知識を更新していく必要があります。AIファンデーションを通じて身につけた基礎知識やものの見方・考え方をベースにして、お客様に合った最適なAIのシステムをご提案できるよう、今後も努力したいと考えています。

 

◎AIファンデーションを教育の入口に

──HPEがAIの教育を実施していますが、 AIファンデーションを推奨するのはどうしてなのですか?

饗場:HPEでは、お客様のチャレンジを支えるDXプラットフォームを促進しており、「5G/IoT」「Digital Workplace」「Data Management & AI」「Hybrid Cloud」の4つのエリアに注力しています。業種を問わず、あらゆる企業様がビジネス変革と新たな競争力の獲得を志向して取り組まれているDXですが、HPEでは、この4つのエリアに対してハードやソフトを含むソリューションを提供する機会が増えています。

4つのエリアのなかに「Data Management & AI」があるように、AIは重要であると位置づけています。

また、HPEの教育サービスにおいて、人工知能AI研修でAI、機械学習、ディープラーニングを基礎から応用まで総合的に学べるカリキュラムの提供に取り組んでいますが、AIファンデーションは全体の入口、基礎の教育と考えています。

 

──AIファンデーションはどのような方に受講して欲しいとお考えですか?

饗場:長竹が言ったように、今、AIの案件が多くなってきています。機械学習やディープラーニングを受講するのはエンジニアが中心となるのですが、AIファンデーションはテクニカルだけでなく、営業やマネジメント、AIのプロジェクトに関係する人たち全般と考えています。

 

──AIファンデーション以外にもAIに関するプログラムはあります。AIファンデーションを選んだのはどうしてなのですか?

饗場:確かに、日本にはG検定という認定資格はあります。AIの需要を見たときに、グローバルな視点で基礎を習得することが大事だからです。また、AIファンデーションは認定資格である、ということも理由のひとつです。

 

──AIファンデーションの魅力は何ですか?

饗場:ディープラーニング入門には倫理と法律という章があり、そこは大事なポイントとして時間を割いて教えるようにしていますが、AIファンデーションではさらに広く扱っています。

今後、AIが悪用されるケースも出てくると思います。法律が追い付いていないという課題もありつつ、倫理と法律を考える部分がAIファンデーションでは重要視されています。AIを語るうえで、考えなければいけないことが勉強できるのはAIファンデーションの魅力だと思います。

 

──AIファンデーションでの今後の展開をどう、お考えでしょうか?

饗場:まず、AIファンデーションを受講してもらい、そこからディープラーニングに行くのか、マシンラーニングに行くのか、データサイエンティストに行くのかを考える。仕事に活かせる教育を受け、ステップアップして欲しいと考えています。

AIファンデーションはAIとは何かを学びたい人に受けて欲しい。資格試験だとひたすら記憶して合格したけれど、実はあまり理解していないということがあります。そうではなく、AIでは何ができて、何ができないのか、どのように利点があり危機があるのかも考えられる手掛かりを得るために受けて欲しいと思います。

個人的な想いですが、AIは大きな力を持っています。それが危険につながるのなら、「こういう危険がありますよ」「落とし穴がありますよ」ということは理解していなければいけない時代だと思っています。AIは既に当たり前の知識として身に付けておく必要があると考えています。

 

──教育体制は充実していますね。

饗場:弊社はハードベンダーなので、サーバーやストレージに対する教育は、提供する義務があります。そこをベースとして、他にもソフトウェアのソリューションやオープンソースのニーズを見ながら、需要のありそうなカリキュラムを提供しています。

グローバルな教育サービスがあることが特徴です。グローバルなメニューに基づいて日本で展開しています。

ただ、「このカリキュラムはグローバルではスタンダードなのに、日本では人気がない」といったギャップもあります。日本のニーズを意識してカリキュラムを整備しています。

 

◎ビジネスパーソンには、必須の教養となるAIファンデーション

──AIファンデーションコースの講師をご担当されている川添さんから、特徴を教えていただけませんか?

川添:AIファンデーションは、AIに関するプロジェクトを推進するに当たり、必要なことを学べるコースになっています。

AIの特徴や、AIが向いている領域、逆に向いていない領域。また、人とAIはどのように一緒になってビジネスに取り組んで行けばいいのか、といったこともAIファンデーションに含まれています。

AIだけにフォーカスした内容ではなく、今後、AIと人が共存する時代になって行くという前提で、AIが何を担い、人はどうすればいいのか、といった内容が多くなっています。

 

──理系の人にはどのようなことが学べますか?

川添:理系の人にとってAIといえばディープラーニングやプログラミングの話が中心になると思いますが、AIファンデーションでは、先ほど言ったような、AIがやってはいけないことが学べます。また、AIを理解するには人間を理解しなければいけません。人間はどのような思考をしているのかといった話も出てきます。

 

──ビジネスパーソンはどのようなことが学べますか?

川添:AIは現在、どのようなところで活用されているかを業態ごとに紹介しています。

また、AIをビジネス面で活かすため、AIのプロジェクトはどう進めて行くべきなのか、どのような体制を組めばいいのか。資金面についても触れています。

AIはまだ、技術的に標準化されているものではありません。どうしても実験的な取り組みが必要になります。実験的な要素も含んだ状態でプロジェクトを進めて行く方法も理解できます。また、AIを活用したビジネスの現実性の検証でも役立つと思います。

 

──他のAIのコースとの違いは何でしょうか?

川添:日本にはG検定がありますが、G検定はAIの仕組みや数学的な話が出てきます。G検定はジェネラリストを対象と位置付けていますが、そうとも言い切れない部分があります。AIファンデーションでもAIの仕組みや数学的な話は出てきますが、割合としてはさほど多くはありません。あくまでのAIでビジネスを行う人が知っていなければならないことがまんべんなく学べます。

 

──資格という点ではどうでしょうか?

川添:G検定と同様、認定資格を取ることができます。研修で学習していただき、覚えるために自己学習も行って復習していただければ合格できると思います。

また、G検定と違ってAIファンデーションはグローバル対応のコースです。参考書籍はアメリカの書籍で、海外の事例を幅広く学べることはメリットだと思います。

 

──どのような人が受講するのが良いでしょうか?

川添:気づいていないだけでAIはチャットなど、さまざまなところで広く使われています。そういう意味では、業界を問わず、サービスやプロダクトの企画をしている方ならAIを使うことは選択肢になってくるはずです。

全てのAIプロジェクトに関わる方にお勧めしたいと考えています。

また、今、AIプロジェクトにアサインされていなくても、いつ自分がアサインされるか分からない時代です。サービスやプロダクトを提供している組織であれば、今から準備をしておく必要もあると思います。

さらに、AIプロジェクトに直接関わる人はもちろんですが、プロジェクトを承認する立場の課長職以上の人にとっても学びになります。むしろ、AIでビジネスが成長させることができるのかを判断する立場にある方には必須の資格ではないでしょうか。

営業担当であれば、知識を得ることでお客様にどうAIを提案すればよいかを具体的に話せるようになるでしょうし、正しい提案ができるようになります。マネージャーならばAIプロジェクトの進め方は仕事に役立てることができると思います。

今は、お客様の方がAIに詳しい、ということがあります。これからの時代、AIは何となく知っているレベルではビジネスになりません。知識を持っていることを証明する資格は現代のビジネスマンに必須になって行くと思います。

──ありがとうございました。

 

 

 

日本ヒューレット・パッカード合同会社
HPC&AI/MCS事業統括
HPC&AI/MCS技術本部
第二プリセール部
プリセールス・コンサルタント
長竹茂紀氏

 

Pointnext事業総括
GreenLake&コンサルティング推進本部
教育サービス部
饗場守氏

 

講師
川添真智子氏

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