拡大を続けるデータセンタービジネス

さまざまな顧客ニーズに応えるためのアップデートの重要性 

 

近年、データセンター市場が拡大するにつれて、そこに生まれる顧客ニーズはさらに深化し、細分化を続けている。お客様からの多種多様な要望に応えるためには、常にデータセンターに纏わる最新事情に精通し、幅広い分野での知見を持つことが大切だ。

 

2024年春からスタートしたCDESS(データセンター環境サスティナビリティ・スペシャリスト認定コース)の第1期受講者の一人、「MCデジタル・リアルティ株式会社」にてDCエンジニアリングマネージャーとして活躍する宮島洋平さんに、データセンタービジネスの最新事情とCDESSコースを受講した感想を伺った.

MCデジタル・リアルティ株式会社・・・三菱商事(MC)と、世界中で300か所以上のデータセンターを運営する大手事業者Digital Realty社との対等出資によって2017年に誕生した合弁会社。

 

 MCデジタル・リアルティ株式会社 宮島洋平氏

 

—データセンタービジネスに関わるようになったきっかけは?

宮島さん(以下、宮島): 大学卒業後、最初に大手の組織設計事務所に入社して、空調や衛生関係を中心に建築設備設計の仕事に携わっていました。その経験の中で、既存のデータセンターの改修や設備更新のための設計を手掛ける機会があり、それがデータセンターとの出会いです。恥ずかしながら当時はデータセンターについてはあまり知らなかったのですが、実際に目を向けてみると市場が大きく成長性も見込めたことから、すごく魅力的に感じたことを今でも覚えています。

その後1年間赴任したシンガポールでは、フィットアウト(設備構築)工事の詳細設計から構築、試験調整、そして引渡しまで一貫して従事しデータセンターへの理解を深められました。同時に現地でEPI社のCDCP(データセンター・プロフェッショナル認定コース)を取得しました。

帰国後は空調関係の商材などをアジアや国内のデータセンターに提案して納品するといった、セールスエンジニアの業務も行い、多角的にデータセンター業界に関わるようになりました。その後、2021年に現在のMCデジタル・リアルティ株式会社に入社したのです。

 

−現在の職場ではどのような業務をされていますか?

宮島: 2023年4月に「データセンターエンジニアリングチームと」いう部署が新設され、そちらに所属しています。データセンターエンジニアリングチームは、契約前の段階での技術検討や、構築後の試験調整マネジメント、より安定したサービスをご提供するための運用改善など、データセンターをご利用されるお客様との契約前の段階から、お客様に引き渡した後の運用まで、データセンターの技術的側面を全般的に支える部署です。

 

−お客様からの要望というのはいろいろな種類があるのですか?

宮島: さまざまなものがあります。特に今、当社では大規模な生成AIやHPCの需要に応えるハイスペックなデータセンター環境をお客様に提供しており、NVIDIAからDGX-readyの認証もいただいています。例えば冷却にしても、これまで主流だった空冷に加え、GPUサーバーなど、IT機器の高電力化に伴って液体冷却の需要が増加するなど、お客様はAIやHPCを活用した次のビジネスを見据え、先手を打って新たなご要望を出してこられます。データセンター業界もそれに合わせ、すごいスピードで進化しています。

 

−そんな中で、CDESSを受講されたきっかけは?

宮島: 先ほどCDCPをシンガポールで受講したという話をしましたが、その後日本に帰ってからCDCSCDCE、そしてCDFOMの資格を受けさせていただきました。その中で環境にフォーカスしたCDESSというコースが始まることを知り、持続可能なビジネスを推進していくためにも絶対に受講したいと思い申し込みました。

 

−ほぼ網羅されていらっしゃいますね。

宮島: そうですね。CDCP、CDCS、CDCEはどちらかと言えば全体像やデータセンター構築の話題が多く、CDFOMはファシリティのオペレーションにフォーカスした内容ですので、私の業務と重なる部分が多くあります。

今回のCDESSは環境問題やそれに対する取り組みが関わってきますので、データセンターに関するあらゆるフェーズの資格を取得させていただいたのかなと感じています。私はバックグラウンドが空調・メカニカル系なのですが、それだけではなく本当に幅広い分野のエンジニアリングや、ひいてはエンジニアリングを超越したところまで知識を身につけなければお客様のご要望を叶えるのは難しいと感じます。特に、受注前のお客様とお話しする段階ではさまざまなご質問をいただきますので、適切に回答できるよう常に学び続けていきたいなと考えています。

 

−実際に受講されてどうでしたか?

宮島: これまでいろいろなお客様と関わらせていただき、設計・構築から運用まで幅広くエンジニアリングに関わってはいるものの、環境のトピックやサスティナビリティ関連の部分に触れることはそこまで多くはありませんでした。インターネットやさまざまな記事媒体でサスティナビリティ関連の内容について読むことはあっても、講師の大谷先生のようなプロフェッショナルな知見をお持ちの方から直接お話を伺ったり、他社からの受講生の方と意見を交わす機会はなかったので、すごく有意義だったと思います。我々が今、AI対応のデータセンター事業者として、冷却方式など新たな技術にチャレンジしながら持続可能なビジネスを行っていくには、どの様なところに気をつけるべきかということを体系的に学ぶことができました。

 

−CDCPなど他のコースとの違いは感じましたか?

宮島: そうですね。これまで受講したコースは、どちらかといえばデータセンターを構築・運用する側にフォーカスされていたと思いますが、CDESSは運用側だけではなく、データセンターをご利用になる方や、今後利用を検討されている方、ひいては行政にかかわる方など、データセンターを取り巻く環境に関わっているすべての方にとって有意義な内容だと思います。

 

−CDESSで学んだことは、実際の現場やビジネスのヒントになりましたか?

宮島:  一番分かりやすいところでは、エネルギー効率を表す指標としてPUEという値が一般的に使われていますが、それ以外にも7つもの指標があることを学びました。現場レベルでは、自分たち自身の運用を見つめ直して、1年前と比べてどうなのか、1年後にはどうしていけるのか、という指標として使っていきたいと思いました。設備の効率的な運用を常に考えて最適化していく、運用をしていて課題が見つかったものを次の設計にフィードバックして改善していく、このような取り組みを続けていけばどんどん良いサイクルが生まれていくのではないかと考えています。

 

−データセンタービジネスに携わっていて感じることは?

宮島: データセンター業界が急成長し、次々と新たな技術が入ってくる中で、運用する我々の知識も常にアップデートしていかなければいけません。日々進化しているものについていくことや、それを追い越すような形で知識や技術を探求していくことは、絶対に面白みがあると思います。毎日何らかの記事でデータセンターについて触れられているのを目にしますが、電気・水道・ガスなどに準じる社会インフラとして広く認知される時が来ていると感じます。社会的な責任も、やり甲斐も大きい仕事です。「持続可能なビジネスとしてデータセンター業界を作り上げていかなければいけない」「自分もその一端を担っている」といういい意味での緊張感もあります。

 

−CDESS講師の大谷先生についての印象は?

宮島: 大谷先生は明るいお人柄で、講師と受講生という壁もなく、フラットな関係で会話できるのが魅力です。コースは基本的にテキストに沿って進むのですが、いい意味で脱線することもあり、常にアップデートされた知見や情報をシェアしていただけるのがすごく新鮮に感じます。また、受講生からの質問にも丁寧に回答してくださるのはもちろん、プラスアルファの情報の中にも学びが多いです。

 

−受講を検討している方にメッセージをお願いします。

宮島: 一言で言うなら、もしも迷っているならすぐ申し込むべきだと思います。

CDESSのテキストには学ぶことが多く、地球温暖化とはなにか、なぜ温暖化が起きているのか、今どんな取組が行われていて、グローバルでどのような目標が掲げられているのかといった環境問題の全体像から、それらを落とし込んでいったときにデータセンターでは何が問題で、何を意識しなければいけないのかという流れで話が進められていきます。環境問題は生きていれば誰しもが関わることで、身近な内容だと思うので、データセンターに関わっているか否かに関わらず、ぜひたくさんの方にお薦めしたいと思います。

−本日は有難うございました。

 

 

 

【宮島洋平氏 プロフィール】

MCデジタル・リアルティ株式会社
DCオペレーション本部 DCエンジニアリングマネージャー

国内の組織設計事務所にて主に空調や衛生関係の設計等に携わるなかで、データセンターと出会う。シンガポールでの海外勤務時にEPI社によるデータセンター・ファシリティー認定資格CDCP(データセンター・プロフェッショナル認定コース)を取得。帰国後もさらに深くデータセンタービジネスに関わるようになり、2021年7月に入社。

以来、CDCS、CDCE、CDFOMなどの認定資格を次々と取得し、2024年3月に国内でスタートしたCDESS(データセンター環境サスティナビリティ・スペシャリスト認定コース)を第1期生として受講・取得した。

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