データセンターの最強の目利きが語る、データセンタービジネスの面白さと資格の価値

~受講者対談インタビュー~

国内外のデータセンターの市場規模は年々、増加傾向にある。ITの加速と取り扱うデータ量の爆発的な増加、それに伴うクラウドサービスの推進が背景にある。もはやビジネスにおいてデータセンターは切っても切れない存在になっている。

 そのため、データセンター研修コースでの知識は、クラウドやデータセンタービジネスに関わる方、全員の必須知識になっていると言っていい。

 

2019年7月1日、NTTコミュニケーションズは国内に特化し、グローバル展開はNTT Ltd.としてスタートした。

NTT Ltd.としてグローバル展開を進めるNTT Ltd. Group吉田直樹さん(Data Center Services, ICT Infrastructure Services, Manager)にデータセンター研修コースの活用方法、可能性を伺った。

 

 

◎データセンターの品質には、実務者との関係性を作ることが重要

どのような業務をされているのでしょうか?

吉田さん:NTTコミュニケーションズグループがグローバルに展開しているデータセンターの品質管理、およびデータセンターを買収する際の企業評価活動であるデューディリジェンスなどを担当しています。

 

データセンターのM&Aとなるとすごい規模ですね。

吉田さん:はい。数百~数千億円になることもあります。担当しているM&Aは年間で数件です。私が携わっていないものも含めて、ここ10年で、イギリスのGyron Internet社、欧州のe-shelter社、インドのNetmagic Solutions社、アメリカのRagingWire社などがあります。

 

契約書のやり取りだけではないんですね。

吉田さん:そうです。やはり、現地に行かなければわからないことはたくさんあります。事前にデータセンターの図面やドキュメントをもらい、ある程度精査してから、現地でチェックして本当の価値を評価します。困るのはその図面やドキュメント、必要な情報が入手できない時です。先方はなるべく高く売りたいため、都合の悪い情報は、出してくれないですからね(笑)

そんな限られた状況の中で、必要な情報を集め、引き出し、評価しなければならないこともあります。

 

どうしてデータセンターに関わるようになったのですか?

吉田さん:2004年に大手SI会社に入社し、システムエンジニアとしてキャリアをスタートしました。基盤系のSEとしてシステム開発やクラウド関連のソリューション企画に従事していたんです。

そのとき、中国でのオフショアプロジェクトに関わることがあり、いくつかの案件を担当するなかで、グローバルビジネスに興味を持つようになりました。また、ちょうど同じころプラットフォームビジネスにも注目が集まり、データセンタービジネスのグローバルでのマーケットの拡大、重要性の高まりからデータセンタービジネスでのキャリアを意識するようになりました。

その想いとニーズがマッチし、縁あってグローバルのデータセンタービジネスの世界に携わることになりました。2010年から2015年までアメリカに渡りデータセンターの運用面のマネジメントに関わったのち、日本に戻りM&Aやグローバルの品質管理に携わっています。

 

難しいことはどんなことでしょうか?

吉田さん:買収した会社のPMI、グローバルデータセンターのマネジメントです。品質チェックや改善活動を行う場合、先方との関係性をいかにうまく築くかがポイントになります。目的や我々の目指すところがうまく伝わらないと不信感を持たれます。また、スキルレベルが低いと、適切な情報をもらえなかったり、うまく動いてもらえません。我々のやりたいことやスキルレベルを現場メンバー、現地経営層が理解し、「一緒にやってきましょう」となるまでに数年かかることもあります。

また、日本本社主導でグローバルの標準化を行うとしても上手くいきませんし、グローバルの標準化は簡単には行かないところがあります。

例えば、オペレーションを標準化するために今ある運用を変えるとなると、莫大な投資が必要となる場合があります。あるいは、そのデータセンターを従来から使っているお客様にしてみれば、オペレーションの変更は「何故、それをする必要があるのか」となります。逆に、新規のお客様からは「NTTなのになぜオペレーションが違うんだ」となります。

  

グローバルで考えた場合、データセンターの日本と海外の違いはありますか?

吉田さん:日本は電力の信頼性が高く、停電はほとんどありません。しかし、海外では停電が頻繁に起こる地域もあります。そのため、停電が起きる前提でデータセンターは作られています。逆に日本は地震が多いですが、海外の地震が起こらない国や地域では耐震化は行っていません。国や地域により設計思想に違いがあります。

近年ではインフラ環境や自然災害だけでなく、テロの問題もあります。セキュリティを強化していて、鉄格子のバリアがあり、簡単には入れないようになっているところもあります。それこそ、戦車が来てもビクともしないような。こういった点でも各国違いもあります。

 

確かに、日本ではテロ対策は弱いかもしれませんね。

吉田さん:はい。しかし、最近ではグローバルなお客様が日本のデータセンターを活用されるようにもなってきており、徐々に状況は変わってきています。

 

◎海外のデータセンターのM&Aでは資格は必須

データセンターのプロフェッショナルなのに、データセンター研修コースを受講したのはどうしてですか?

 

吉田さん:データセンターのキャリアを積んでいくにあたり、基礎から設計・運用まで学ぶ必要があると考えました。HP社の研修は網羅的・体系的に整理されていましたし、同僚にも勧められて、受けることにしました。また、M&A案件が増えており、上位のかなり深いレベルでのスキルが求められるようになったことも理由としてあります。

海外でも国内でも、「データセンターの資格」は一つの信用になります。私がどのレベルのスキルを持っているかがわかってもらうことにより、会話がスムーズに進みます。そんなメリットもあります。また、

 

データセンター研修コースを受けてみて、面白かったとこはありますか?

吉田さん:講師の大谷淳一さんは経験豊富で、ただテキストの内容を説明するだけでなく、実体験を踏まえたエピソードを交えて話してくださり、とても勉強になりました。

送電の仕組み、世界のプレート(岩盤)の話は、非常に詳しく、話が止まらず、「このままだと終わらなくなるので、興味ある方は続きは飲み会で」(笑)ということもありました。

また、図面や設計書から間違いを探すというケーススタディでは、「セキュリティ設計のここに問題があるからセキュリティレベルがおかしい」と解説いただいた際、隣に座っていた受講者が「実は私もあれと同じようなミスをしたことがあるんですよ。」と言っていて、他社からの参加者の経験やコメントを聞けたことも有益でした。

  

具体的だったんですね。

吉田さん:はい。大谷さんの紹介されたエピソードに、私の業務と重なる部分が多かったのも印象的です。たとえば、現場の人たちとの関係性を作ることが重要だというエピソードがありました。なかなかやってくれない人たちには何度も現場に足を運び、「わかった、大谷さんがそこまで言うならやりますよ」と言ってもらえるような関係性を作ることが重要だ、とおっしゃっていました。

私も日々グローバルデータセンターのマネジメントをしていると同じような場面に遭遇し苦労することが多く、大谷さんから伺ったお話が励みになっています。

  

日本では展開していない海外の教育での資格も取得されていますね。

吉田さん:データセンタエンジニアとして、幅広く深い知識を身につけたかったため、まずは日本で受けられる最上位のデータセンター・エキスパート認定であるCDCE(EXIN EPI Certified Data Center Expert)まで取得しました。

HP社の研修はパブリックなTIA-942をベースとした研修ですが、データセンターのマネジメントを実施していくなかで、米国などでは、Uptime InstituteによるTier基準が業界標準なため、それの重要性を肌で感じていました。そのため、米国でUptime Institute認定技術者の資格ATS(Accredit Tier Specialist)を取得しました。

これでデータセンター業界の世界的な主要な業界標準を押さることができました。

TIA-942ベースの最上位であるCDCEも取得していましたが、TIA-942ではなく、CDXXシリーズの最上位資格として認知している方も多く、どうもUptime信者・Uptimeに偏った評価に見られてしまうこともありました。

そこで何か役に立つ資格はないかと模索していましたところTIA-942の認定デザインコンサルタントであるCTDC(Certified TIA-942 Design Consultant)・内部監査員CTIA(Certified TIA-942 Internal Auditor )の資格が海外で取得できることを知り、受講・資格取得しました。これにより、TIA-942も含めたより総合的な評価を得られると感じています。

 

 NTT国際通信では、皆さん資格をお持ちなのですか?

吉田さん:NTT国際通信では、データセンター若手社員やDCビジネスに初めて携わる方など、年齢を問わず幅広く、CDCPの受講を推奨しております。最上位のCDCEを持っているメンバーも十数名おります。Uptime Instituteの資格はグローバルに関わっているメンバー十名程度持っています。ただし、両方の資格を持っているというのは数名ですね。またTIA-942のCTDCとCTIAに関して、現在海外で英語でしか受けられないというハードルが高いためか、おそらく私が日本人初ではないかと思います。

 

資格は必須なものですか?

吉田さん:資格は例えば調理師のようなものです。持っていなくても料理はできます。しかし、網羅的かつ専門的な知識の習得では、資格は非常に有効です。もちろん、ただ資格があればいいということでもありません。調理師の資格を持っていても料理が上達しないように、日々の業務のなかでスキルを上げていかなければなりません。

日々の業務をしながら更なるスキルアップのためにCDCPの資格を取るところからスタートするのが良いと思います。

 

データセンター研修の資格は、吉田さんのような大規模なデータセンターに関わっている人でないと意味はないのでしょうか?

吉田さん:そんなことはないと思います。自社のデータセンターに関わっているなら、そのデータセンターの品質チェックにも役立ちます。また、データセンター事業の営業の方は、ぜひ、受けて欲しいと思います。

 営業も?

吉田さん:はい、意外に聞こえるかもしれませんが、エンジニアだけでなく、営業の方も是非受講してほしいと思います。営業の方がお客様にどのデータセンターを活用するかを提案する際、お客様に「自由に選んでください」というわけにはいきません。いくつか候補を挙げて、どのデータセンターが良いのか目利きすることも必要です。そのようなときにも役立ちます。

 

今はデータセンターが増え、関わる人も増えてきました。そのような人たちには必須なスキル、ということですね。

吉田さん:そう思います。ITとビジネスは切っても切れない間柄ですし、大切なITを預ける場所であるデータセンターですからね。データセンターに関わっているのなら取っておいて損はないと思います。

 

◎データセンタープロバイダとしてさらなる高みを目指して

今後の展開を教えてください。

吉田さん:2019年7月1日からNTTグループ、特にグローバルビジネスの再編が行われました。国内のNTTコミュニケーションズとグローバルのNTT Ltdに変わり、私は現在NTT Ltd Groupに属しています。

グローバルデータセンタービジネスはNTT Ltd Groupとして新たな一歩を踏み出しましたが、我々NTT Ltd Groupは、データセンターのマーケットシェアは世界第3位となります。

まだまだ改善の余地・課題はありますが、フルスタックサービス、ネットワーク、高品質で標準化されたデータセンターを強みとして、更なるデータセンタービジネスの拡大を図っていく予定です。

課題はなんだとお考えですか。

吉田さん:データセンタービジネスは堅調ですが、どのデータセンタープロバイダーもTier3相当を意識して構築しており、差別化が難しくなってきているのは事実です。その中で、お客様に選んでもらえるデータセンターサービスをどう提供していくかだと思います。

 

差別化することが課題ですね。

吉田さん:そうです。そのためには、データセンターという「箱」を提供するのではなく、その上のネットワーク、クラウドやサービスも含めてフルスタックでサービスを行うことが大切だと考えています。

また、細かい設計面での質疑も増えています。お客様ごとに評価基準があり、それを満たしているかもチェックされます。その際、設計図を見せて説明しなければならないこともあり、要求レベルはますます高くなっていくものと考えています。いかにお客様のご要望に応えながら低コスト、短納期、高品質を実現していくかがポイントだと考えています。

 

データセンターの面白さはなんですか?

吉田さん:難しい質問ですね(笑)。

当時、上位レイヤーのクラウド・アプリケーションと下位レイヤーのデータセンターの両方に精通したエンジニア、特にグローバルとなるとほとんどおらず、そのような人材になれればと思っていました。

NTT Ltd. Groupはデータセンタープロバイダとしてマーケットシェア世界第3位ですが、2位や1位という企業にどうすれば追いつくことかできるのかを常に考えています。その過程で新技術の導入や改善を繰り返し、いかによりよいデータセンターサービスを創り上げていくか、ですね。

 

最後にデータセンターを活用してビジネスを加速させたいと考えている企業へのアドバイスをお願いします。

吉田さん:データセンターの活用ではリスク回避も必要です。ひとつのデータセンターに依存するのではなく、分散するのが良いと思います。そのときにデータセンターの質やサービスを見定めることも大切になります。

また、システムの更改(リプレイス)も5年、3年とサイクルが短くなっています。その次を踏まえて、どのデータセンターを使って行くべきかも考えなければなりません。そのようなときに、データセンターの知識や資格があると役立つと思います。

最後に、我々はNTT Ltd. Groupとして新たな一歩を踏み出しました。お客様のビジネスの発展に貢献していきながら、業界をリードしていける存在になれるように精進してまいります。グローバルデータセンタービジネスに挑戦したい方・興味を持たれた方はぜひ、ご連絡ください。ぜひ一緒にやっていきましょう!

 

 

【プロフィール】

 吉田直樹氏

NTT Ltd. Group
Data Center Services, ICT Infrastructure Services
Manager

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