マネジメントこそアジャイルを応用すべき

トップの指示はもういらない、自ら考え行動できる自律的な組織への変革により顧客と社員の満足度を最大化

 

~「EXINアジャイルスクラム」資格取得者インタビュー~

 「EXINアジャイルスクラム資格」対応コースは、アジャイル手法とスクラム実践を組み合わせた体験型の研修である。アジャイル開発はもともと、ソフトウェア開発において活用されていたアプローチだが、アジャイル手法をマネジメントに活かし、スクラム実践を合わせることで柔軟かつ機動力のあるチームを形成し、よりお客様への価値提供に注力できるのではないか。

そのような仮説を基に、個々人のリーダーシップを尊重し、マネージャーからの指示待ちや報告のための無駄を無くし、自律的な組織への変革とアジャイルなマネジメントを実現された河野さんに成功の秘訣を伺った。

アイ・ラーニング社で本研修を受講し資格取得したキンドリルジャパン合同会社 河野正治さん

 

◎あたりまえを疑う勇気が、お客様にとって変革へのパートナーとなる

 ─キンドリルジャパンは、どのような会社なのでしょうか?

河野さん 2021年9月1日に、IBMからキンドリルジャパン合同会社として事業を開始しました。

世の中の変化の速度が上がる一方で企業・組織に対する信頼の重要性が高まる中、社会基盤としてのテクノロジー・インフラストラクチャーの堅牢性・信頼性を維持するとともに、オープンかつ柔軟に対応していくことが益々お客様にとって必要な価値となっています。

そのような中で、IBMと強力なパートナーシップを維持しながら、より広範囲なエコシステムのパートナーとの協業を強く推し進め、お客様とともに新しい社会価値を共に創っていきます。
Kyndryl(キンドリル)は造語で「Kyn」は親族のような関係を表す「kinship(キンシップ)」から、社員、お客様、パートナーたちとの強い絆を表し、良好な関係を育む姿勢を表しています。「dryl」は植物などのつるを意味する「tendril(テンドリル)」から、新しい成長とつながりを表し、社会成長に向けて共に取り組む姿勢を表しています。

キンドリルは「社会成長の生命線」であり、あらゆる境界を超え、チームの力で未来を築く要となる社会基盤を創造し、目指す未来を共に現実にしていきます。

─IBMから立ち上がったのはどうしてなのでしょうか?

河野さん 一言で言うならば、あらゆる制約を撤廃してお客様本意のサービスを迅速に提供できる体制に変革するためです。

例えばシステム一つとっても、いまやオンプレミスや単体のクラウドベンダーだけで稼働しているほうが稀な状況です。IBMの製品に重きをおいたサービス提供だけでは、お客様が目指すビジョンを実現することはできません。お客様の現状を踏まえた上で、客観的な視点から様々なパートナーのソリューションを組み合わせて、ビジネスを加速させるために最も効率が良く包括的なITアーキテクチャやサービスをお客様は期待されています。

IBMから独立したことでより自由で広範囲なパートナーシップを確立し、お客様に寄り添った形で支援の幅を広げることができるようになりました。

 

─河野さんはどのようなポジションでお仕事をされているのですか?

河野さん 私は、キンドリルガレージの事業部長として新しい事業部を立ち上げました。

キンドリルガレージは、インフラを起点とした変革のための ”人” “手法” 実験場” を提供し、お客様の”不”を解消するために、最先端の手法とテクノロジーを試しながら専門家と共にスピード感のあるITサービスの変革を支援します。

デジタルIT戦略や顧客体験、PoCを迅速に作り上げるために、まさに今回の研修で学んだアジャイルとスクラムの手法も含めたアプローチを実践しています。

 

─実験場というのはユニークですね。

河野さん そうですね。何か新しいアプリケーションを開発しようとした場合、最小限の機材と開発のためのクラウド資源があればスモールスタートで検証が可能となりますが、インフラの場合は、新しいテクノロジーを検証しようとしても大規模な投資が必要になり、机上検証に長い時間をかけてから実際の案件に着手されることが一般的です。実験場を用意し、新しいことを試すハードルを下げ、さらにお客様にとって価値を体感いただけることでスピード感をもってお客様の変革を支援できると確信しています。

 

─ITサービスを支援するだけでなく、ITサービスの変革を支援することがキーポイントで、成長のために戦略的なところから入って行かれるのですか?

河野さん おっしゃる通りです。昨今、どのお客様でもDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進されていますが、業務そのものや組織、プロセス、企業文化を変革し、競争上の優位性を確立する本来の目的から逸れてしまい、新しいツールの検証や導入そのものを目的にして生産性向上どころか、無理に新しいツールを導入し逆に生産性が低下してしまい、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。

キンドリルガレージでは、実験場に加えて、ビジネスを成長させる観点でどのような効果が期待されるのか、そして新しいアプローチの仮説が正しいかの両輪をスモールに繰り返し検証していくことで、小さな失敗と成功を繰り返しお客様にとって本当に必要な変革の方向に歩みを進めます。

 

◎座学の暗記は忘れていく、体験したことは二度と忘れない

 ─「EXINアジャイルスクラム」も学ばれて、お客様に必要な会社になって行くとのことですが、「EXINアジャイルスクラム」資格を取得したのはいつ頃で、どうして取得しようと思われたのですか?

河野さん IBMに在籍中の2019年に取得しました。

当時、DXというキーワードが世の中に溢れている状況で、インフラ領域におけるDX推進に特化した営業チームを立ち上げました。業務領域におけるDXがイメージしやすい中で、「インフラにおけるDXとは何か」を日々自問自答していた時に、まずは王道のアプローチを体験してみたいと考えたのが「EXINアジャイルスクラム」でした。

アジャイル開発では、「顧客価値の最大化」「スピード重視」「従来の発想にない新たな考え方の創出」が謳われており、アジャイルとITインフラの領域を掛け合わせることによって、新たな化学反応で今までにはない新しいアプローチが切り拓けるのではないかと発想したのがきっかけです。

 

─会社から「受講しろ」と言われたわけでなく・・・。

河野さん 学びなくして新しい視点や考え方の成長はないと常日頃から考えており、自ら学びたいと申し込みました。

IBMでもデザイン思考やアジャイル手法には注力されていましたが、アプリ開発のメンバーが優先的に受講され、ITインフラメンバーの受講による効果は期待されていないため、敬遠されていました。

誰もやったことがないのだからやってみないとどのような可能性が見出せるか誰もわからないとチャレンジしてみました。

 

─「EXINアジャイルスクラム」は、ご存じだったのですね。

河野さん はい。IBMでは多数のコミュニティ活動があり、自ら経験したノウハウをフィードバックする文化が非常に根付いています。

当時もアジャイルに関する勉強会や経験事例の共有が多数開催され、インフラにおける可能性を日々模索していました。

 

─試験は難しかったですか?

河野さん 実は、資格試験は得意で、難易度的にはそれほど難しくはありませんでした。

ただ、スクラムは馴染みのない手法なので、そういった意味では、全てが新鮮な気持ちで学べて、大変面白く学ばせていただきました。

 

─資格を取るコツはなんでしょうか?

河野さん やる気あるのみです(笑)

資格取得はシンプルです。出題範囲が決まっているので、範囲にあることを勉強して自分のものにすれば、必ず合格できます。そのため、必要な勉強量を最初に全て洗いだします。

どの資格でも、推奨勉強時間がありますので、一般的な学習スピードと自分の学習スピードを比べてどの程度の時間をかければよいか合格に至るプロセスを頭の中で先に整理してから学習を開始します。

ただし、役職が上がるにつれて忙しさが増し、学習時間の制約がでてきます。

基本的に土日で最大でも24時間程度しかまとまった時間が取れないため、例えば100時間学習が必要な資格があった場合にどうすれば24時間で学習を終えることができるかを常に計画しつつ、1時間毎のスプリントを回しながら改善点を次の学習に反映させるように学習しています。資格取得においても十分にスクラム手法を活かすことができますね。

 

─素晴らしいですね。最近何か面白い資格を取られましたか?

河野さん 2021年に1週間でAWS(Amazon Web Service)、Microsoft Azure、GCP(Google Cloud Platform™)、IBM Cloudの4大クラウドの資格を全て取りました。「1か月あればおそらく取れる人はいるだろう。でも、1週間で取れる人はきっといない。やれば面白い反響があるし、会社の意識も変えることができる」と考えたからです。合格体験記を社内のコミュニティで講演したら、全社に行き渡るほどの大きな反響をいただきました。

 

─「EXINアジャイルスクラム」の勉強はいかがでしたか?

河野さん 5日間の研修で、最終日に試験が含まれる構成の研修でした。全ての方が合格できるわけではなく、問題も正直難しかったですが、研修における不明点は、毎日講師の方に相談させていただいたので、おかげさまでなんとか合格できました。

 

─集中して勉強したことは忘れると聞きますが、無茶な勉強方法で取得したわけではないんですね。

河野さん 座学だけなら暗記なので、短期で忘れてしまいます。けれど、「EXINアジャイルスクラム」コースはワークショップスタイルだったので、2年前のことですが今でも思い出せます。

 

─ワークショップの方がいいですか?

河野さん 絶対にワークショップスタイルが良いです。15人くらいの参加者が3組に分かれて、チームでディスカッションし、フリップチャートにポストイットを貼って行く。それぞれの課題に対して、各チームで成果を発表するという流れの研修でした。特に実践に則したワークショップだったので現場でもそのまま活用できる内容で、複数のカードを使って優先順位を投票していくワークショップは2年経ったいまでも現場で使っています。

トレーニングを受ける前は、アジャイルスクラムの知識もありました。しかし、知識をどうアクションに繋げればよいのかがわからなかった。その初めの一歩として、誰かに研修やコーチングいただくことは非常に重要であり、ワークショップスタイルの研修は特に参加する意義があると高く評価しています。

 

─河野さんの勉強方法は、他の人が真似できない、再現性がない独自スタイルのように思えますが、「やりきる」という気持ちがあれば不可能ではない?

河野さん 人類に不可能なことなんてありません。一番ダメなのは、不可能だと自分の中で壁を作ってチャレンジしないことなんですね。誰からも無謀だと言われても自分だけは自分の可能性を信じてあげる、そうすると必ず道が開けると私はいつも挑戦し続けています。

IBMでも普段からマルチクラウド関連の資格取得を推奨されていますが、多くの社員は率先して勉強しようとしない。でも普段からただでさえ忙しい事業部長が、自らチャレンジを宣言して、宣言通りに4つの資格を1週間で合格した。

人間面白いもので、自分より忙しい人が不可能と思えることにチャレンジして達成したという人の話を聞くと嫌でも触発されます。自分ももっとできる、自分も挑戦してみると、次々に挑戦してくれる方が増えて、毎週私もまずは1つチャレンジして合格しましたという報告をくれるのが本当に嬉しかったです。

真剣になれば人は真剣に応えてくれる、人の心は行動によって動かせることを知り、改めてリーダーとして同じ会社の仲間に何ができるのか一段視野が広がりました。

 

◎逆転の世界、マネージャーは脇役となり全メンバーが主役となる

─「EXINアジャイルスクラム」は、どのように役に立つとお考えでしょうか?

河野さん インフラの組織は比較的トラディショナルな文化で、従来から変わろうとしない、変わらないのが正しいと考える文化が根強くあります。しかし、成長するには何かしらの変化を与えてあげないといけない。「EXINアジャイルスクラム」は、変化を与えるにあたり、どうすればいいのかを体系的に示してくれます。

 

─「EXINアジャイルスクラム」は、リードするスクラムマスターがいて、看板方式で案件をボードに貼り、マネージャーは部屋にくると、パッと見で進捗状況わかるというのが、基本的な考え方です。どのように活かしているのでしょうか?

河野さん 同様の仕組みをTrello(プロジェクト管理ツール)とMURAL(クラウド型ホワイトボードツール)で実現しています。

お客様からの新たな相談や新しいアイデアが出てきたタイミングで全チームメンバーがいつでもTrelloにバックログとして新しいカードを追加できるように整備しました。基本的にお客様からの課題やお客様を幸せにするためのアイデア、チームとして改善すべき課題が蓄積されていくので、チームとしてどのような作業をしなければならないか1ヶ月もすると大量に蓄積されてきます。

そこから優先順位をつけて、アクションを具体的にしていくために、MURALを活用するようにしたことで、「まず、ホワイトボードディスカッションを始めよう」とメンバーの意識づけが変わってきました。従来のマネジメントではどうしても場当たり的な活動になってしまっていたところが、より戦略的かつ継続的に活動を可視化しながら作業状況を瞬時に把握できるようになり、従来に比べてはるかに生産性の高い活動ができるようになったとこの2年間で体感しています。

 

─時代の変化に対応するためにも知識が必要だった?

河野さん 知識も重要です。ただし、知識で頭でっかちになる人は多くいて、それでは前には進まない。前に進めるためには知識と手法、そして実践する実験場が必要です。手法を効率的に回すために、私の場合はTrelloとMuralを活かして推進しています。

私のチームでも従来Excelベースの古い管理方法をやっていましたが、チーム内のタスクを全てTrelloで管理するようにしました。そしてスクラム手法を使って、1週間単位にサイクルを回してみました。

最初はツールの使い方や文化の変革についていけず、苦労するチームメンバーも多くいました。数ヶ月後何が起きるようになったかというと、今までスケジュールを厳守できなかったチームメンバーが、99%遵守できるようになりました。

新しくやったことはTrelloで新たなタスクが発生した時、新しいカードを追加して管理し始めただけです。たったそれだけで、50%くらいしか順守できていなかった状況が、99%順守できるようになりました。

管理負荷も削減でき、ガバナンスを利かせることもできるようになり、主な理由は、自分の状況とチームの状況を瞬時に把握できるように可視化できたことだと分析しています。自分だけが遅れている、自分だけが対応できていないというのが瞬時に浮き彫りになってしまうことで、何も言わずに自発的にスケジュールを徹底するようになりました。

 

─柔軟な方法に変えたのですね。

河野さん はい、チームメンバーへの作業分担のやり方も180度変えました。従来はチームメンバーのスキルやワークロードの状況から適宜マネージャーから作業を指示する形態を取っていましたが、マネージャーがどうしてもボトルネックになってしまう、都度チームメンバーからの進捗状況の報告が必要になる、指示待ちのチームメンバーが存在してしまうといった多数の改善が必要な状況に陥っていました。

これでは無駄が多いので、どうすれば効率よく、チームメンバーが気持ちよく仕事をできるかを考えた時に、思い切って全ての作業を挙手性にしてみました。

やりたい仕事や挑戦したい仕事があったら自分から手をあげる、指示待ち人間は自ら手を挙げないといつまで経っても一つも仕事がない状況です。指示待ちの文化に慣れきった方々は最初の方はなかなかマインドの変革についてこられなかったのですが、段々とこのままではマズイと行動に変化が起きました。

気が付くと私からの一切の指示がない状況で、自ら考え自ら行動する組織が出来上がっていました。さらに嬉しいのが、受け身だった仕事のスタイルから自発的なスタイルに変革できたことで、チームメンバーのモチベーションがあがり、パフォーマンスが向上したことです。

さらに面白いのが、チームの全案件がTrelloで見える形で管理されているので、お互いのパフォーマンス状況を比較して自分はもっとチャレンジできるとさらに上を目指すようになったこと、また誰かが難航している作業に対して、余裕があるメンバーが支援の手を差し伸べるように変わってきました。全チームメンバーが自律的に行動するようになったことで従来に比べて何倍にも生産性が向上したことを体感できています。

 

─資格や知識、手法は多角化していかないといけない、そういう時代でもあるということですね?

河野さん 予測不可能な時代において、どこに向かって行くのが正解なのか正解が見えない時代において、お客様以上に最先端のテクノロジーや手法を私たち自身が学び、成功と失敗の両方を体験した上でお客様に伴走をしながら成長を支援することが何よりも価値のあることだと考えています。その中でも「EXINアジャイルスクラム」は、アジャイル、スクラム、DevOpsが網羅されており、常に変動する時代に柔軟に対応していくために必須のスキルです。

 

─マネジメントに必要な手法は何だと思われますか?

河野さん どこを目指せばいいかが分からない、また、お客様の期待値が明日には変わっている。何を期待するのか不明瞭で、日々変わって行く時代に、従来のマネジメント手法では、スピード感が追いかない。これらに柔軟に対応できるように日次レベルでの変化に対応できるマネジメント手法が今後益々重要になってくるでしょう。

一方で、どこを目指せばよいのかわからなくなるのはお客様だけでなく、チームメンバーも然りなので、マネージャーは、組織のミッションやビジョンを明確にしておき、何のために自分たちは存在するのか存在意義をしっかり示しておくことがさらにチームでの信頼関係と安心感を強化なものにすると考えています。

 

─これからはどのようなチームを作りたいとお考えですか?

河野さん 私のチームで期待値以上の効果が出たので、これを全社員でやると面白いことになるんじゃないかと考えています。全社的にアジャイルな組織を実現していて、全社員がイキイキと活躍している、仕事に取り組んでいる会社って素敵じゃないですか。

 

─壮大な計画ですね。

河野さん 率先して「EXINアジャイルスクラム」プログラムを生かすことによって、タスク管理も効率化され、チーム進捗による可視化も実現でき、生産性を数字で語れるようにもなってきました。

次の一歩として、横断的な共創に着手し始めています。TrelloやMuralを活用することで、枠を超えて現場の意見やアイデアを収集して、枠を超えてディスカッションをできるようになり常に進捗状況を管理できるので、言いっぱなしではなく最後まで成し遂げるスタイルへだんだんと変革しつつあります。現場の意見が形となって最終的には経営層の戦略に反映される。このような会社になれば素敵ですし、みんなが目指したい姿がきっと本来の会社があるべき姿なので、私も胸を張って自社が1番だと誇れる会社に引き続き変革を推進していきます。

 

─貴重なお話、ありがとうございました。

 

【プロフィール】

 ◎河野正治氏

キンドリルジャパン合同会社
ストラテジックサービス本部 キンドリルガレージ事業部
事業部長

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