アジャイルスクラムマスター資格者 インタビュー:研修を受けて満足しても意味はない。実践で活用することが大切

アジャイルを知っていても経験したことしか分からない。それでは人に教えられない。しっかりと学んでおきたかったという澤田 藤洋仁氏。とある海外講師のアジャイルスクラムマスターを受講したが、日本の大企業に適用する方法は知ることができなかった。そのため、再度、EXINのアジャイルスクラムマスターコースを受講。EXINの講師は日本企業での経験が豊富で、実務への導入まで見据えた講義であり、満足度が高かったという。業務や活用方法について伺った。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、澤田 藤洋仁さん

 

◎ウォーターフォールに限界を感じた

──澤田さんは何度か転職されて伊藤忠テクノソリューションズに入社されたと聞きました。これまでの職歴を教えてください。

澤田:大学を卒業してすぐに滋賀県にある独立系のシステム会社に入社しました。営業で入ったのですが、マイナンバーの対応でエンジニアが不足し、SEとしてアプリケーションの開発に携わることになりました。その後、フルスタックエンジニアとしてお客様の話を聞き、要件定義をし、機能設計をして外注に発注する一連の流れを経験しました。また、同時に自分でも開発を行ってきました。

──転職した理由は何だったのでしょうか?

澤田:あるお客様から開発案件を受注したことがきっかけです。その開発は仕様変更が多かったのですが、ウォーターフォールでスタートしたため、「どうにかして欲しい」というお客様の相談に対して「途中変更はできません」と答えるしかありませんでした。唯一できるのは、外注が作ったものに私が手を加えて対応すること。しかし、どれだけ残業をしても頻繁な変更要望には追いつかず、「すみません」と断り続けていました。

SEはお客様の要望を技術で叶えることが仕事です。ですが、当時のやり方だと工程(ウォーターフォール)が足枷となり、お客様に満足頂ける仕事を実現できないことに疑問を抱いており、転職を決意しました。

──次はどこに転職されたのですか?

澤田:ベンチャーから始まり東証一部(プライム市場)に上場した、都内の医療系システム会社に転職しました。そこではパッケージソフトの開発チームに加わりました。開発はアジャイル。進行はスクラムボードを使い、コミュニケーションはフルリモート。今でこそリモート会議は普通になりましたが、当時はまだ珍しかったと思います。開発は7名が1チームで、タスクをこなし、誰かがパンクしそうになると別の誰かがそのタスクを引き取って行く。スクラムを徹底的に教え込まれました。

──ウォーターフォールからアジャイルになったわけですね。

澤田:ウォーターフォールは各自が決められた作業を黙々とこなして行くだけですが、アジャイルは誰が何をやるかは決まっていなくて流動的。しかも、アジャイルは誰でも同じことができるのが基本原則で、タスクは誰でもできるはずという考え方。スタッフは好きなタスクを選んで作業をすることができます。そこではスタッフ間のコミュニケーションが活発で、「毎日会社に遊びに行っているのでは」と錯覚するほど楽しかった思い出があります。

──チームのメンバーはいかがでしたか?

澤田:メンバーはみな、ポジティブでした。何を話しても「NO」はありません。「いいね」か「それは反省点だね」です。反省も個人に対してではなく、起きたことを反省するというスタンスです。

リーダーの在り方に関しても、ウォーターフォールでは人を導くトップダウン型の従来型リーダーシップですが、アジャイルではメンバーがコミュニケーションをしやすい環境を作る下支え的な存在、サーバント型リーダーシップという在り方をしていました。それがポジティブなチームビルドに繋がっていたのかな、と思います。

──そこから伊藤忠テクノソリューションズに転職されたわけですね。

澤田:スキルアップのために伊藤忠テクノソリューションズに入社しました。今、私が所属しているシステム開発の課は、テックリード担当として2022年4月に新しく生まれた課です。いくつかのチームに分かれており、その名の通り様々なカテゴリにおいて技術力を高め、部の技術面をリードして行くことを目的としています。私は課の新設時に、別の部から異動してきて加わりました。

現在はテックリードのDEVチーム リーダーとして、アプリケーション開発におけるナレッジの共有と展開を担当しています。

 

──伊藤忠テクノソリューションズはアジャイルが中心なのでしようか?

澤田:いえ、現在はウォーターフォールがメインです。しかし、私が担当している案件では、アジャイルを積極的に取り入れています。具体的には、ウォーターフォールにアジャイルの良いところを少しずつ適用して行くというやり方です。

 

◎EXINアジャイルスクラムマスターコースは講師のレベルが高い

──アジャイルスクラムマスターコースを受講したのはどうしてなのですか?

澤田:2点あります。部から研修費用が出るというので、アジャイルスクラムマスターを取得しておこうと思ったのが1点。もう1点は、私はアジャイルを知っているといっても、経験したことしか分からないからです。それでは人に教えることはできません。機会があればしっかりと学んでおきたいと考えていました。

──アジャイルスクラムマスターコースはご存じだったのですか?

澤田:私の部では人材育成に力を入れており、研修への積極的な参加を推奨しています。アジャイルスクラムマスターのことは、その推奨研修一覧パンフレットで知りました。

実は、最初に受けたのは別の会社のアジャイルスクラムマスターの講座でした。講師が海外の方で、リモート、同時通訳で行われました。ただ、杓子定規で「スクラムとはこういうものだ。だから意識を変えなければいけない」で停まっている。言っていることは正しいですし、内容も理解できます。でも、私が知りたいのは、どうすればその考えを日本の大企業に適用できるか、ということでした。

それで、再度、EXINのアジャイルスクラムマスターコースを受講することにしたのですが、講師の原清己先生は「スクラムとはこうだ。だからこうやらないといけない」と言いつつ、「でもそういうわけにはいかないんですよね」となるのが良いところでした。原先生はアジャイルも知っていて実務経験もある。だから日本の大企業にどうすれば適用できるかを噛み砕いて教えてくれる。それができるのは原先生だけだと思います。

──原先生は受講者にはとても人気の講師です。

澤田:原先生の経歴を見て納得しました。現場で汗をかいてきた人だということがよく分かります。講義では失敗談も交えて教えてくれました。海外の講師は海外の実体験ですが、原先生は日本の大企業で積んでこられた経験から話してもらえるので、説得力が違います。現場にアジャイル手法を導入する際の苦労話は、共感しきりでした。研修後は有志が残って1時間ほど原先生とアジャイルトークをしていましたね。

──海外で生まれた考え方なら、海外の講師の方がいい、と考える人もいると思います。

澤田:海外に働きに行くとか、外資系で勤務するなら海外の講師が良いかもしれません。でも、日本のやり方は日本で働いた経験のある講師に教えてもらう方が、実務には繋げやすいかと思います。

 

◎ぜひ、積極的に取り組んで欲しい

──どのような学びがあったのですか?

澤田:SIは、お客様ができないことを、我々の技術と経験を持って実現することです。例えばお客さんが1日5時間かかっていた作業を1時間にする、30分にする。そこに出てくる価値が我々の価値だと思っています。それが実現できるのならアジャイルでなくて、ウォーターフォールでもいい。問題解決に手法は関係ない。選択肢を増やすという意味ではウォーターフォールをないがしろにするのではなく、どちらが良いかを考えて使い分けるのがベストだと、改めて思いました。

──難しさと楽しさではどちらが多かったでしょうか?

澤田:楽しさが9割ですね。自分で苦労した経験がある人ほど、この手法でやればうまく行くのではないか、とワクワクすると思います。原先生の体験談とアジャイルでやる時の方法・考え方、導入時の苦労などの話はプラスになりました。

──どのようなメリットが生まれましたか?

澤田:自分自身の説得力が増したと思います。今の風潮として「アジャイルでやれば成功する」という考え方がありますが、「SIにおいて銀の弾丸などない、それは違う」と考えていました。原先生は「何でもアジャイルにしたらいいのではなく、ウォーターフォールが向いているときはウォーターフォール、アジャイルが向いているときはアジャイルと区別するのがいい」とさらりと言われて、「やっぱり、そうだよね」と思いました。それが1番の気づきでした。

 

──今後、澤田さんが会社をリードされるのでしょうか?

澤田:テクノロジーをリードする役割の課に所属している私は、部をリードして行かなければならない立場にいると認識しています。とはいえ、私が全てを担えるわけはありません。ただ、直近ではテックリードとして部をリードし、将来的には会社をリードできるポジションになりたいと考えています。

当社は企業理念のスローガンとして「Challenging Tomorrow’s Changes」を掲げ、新しいことにチャレンジして行こうとしています。私は自身の経験を用いて、エバンジェリスト的に情報を収集・展開し、新しいことへ挑戦する土台を組んで行きたいですね。

 

──最後にアジャイルスクラムマスターコースを学びたいと考えている方たちへのアドバイスをお願いします。

澤田:ぜひ、手を動かすことに積極的に取り組んで欲しいと思います。研修を受けて先生の話を聞いて満足した、単語や手法を覚えたというのでは意味はありません。実践で活用することが大切です。そのためには小さな案件でもいいのでアジャイルの手法をやってみて覚えるというのが、資格習得だけでなく、その先の活用に繋がると思います。アジャイルを取り入れることで、ぜひ日々の開発を楽しくしていきましょう。

──ありがとうございました。

 

【プロフィール】

澤田 藤洋仁氏

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
流通システム第1事業部
流通システム技術開発第4部
システム開発第4課

 

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